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さっちゃんのまほうのて

たばたせいいち

先天性四肢障害児父母の会
偕成社

絵本の中の一部紹介させて下さい

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さっちゃんは きょう、とっても おかあさんに なりたかったのです。


おかあさんになって、みんなに おやつを あげたり、あかちゃんに ミルクを のませたり したかったのです。


ほんとは、ようちえんの ままごとあそびの おかあさんですけどね。




けさ、おかあさんがいいました。
「さっちゃん、もうすぐ おねえさんね。」


おかあさんのおなかは、もう こんなに まるくて おおきいのです。

じきに あかちゃんが うまれるのでしょう。


「あかちゃん、ここにいるのかな。」さっちゃんは、おかあさんのおなかを そっと なでました。それから
「さっちゃんも おかあさんに なろっと!」そうきめたのです。




さっちゃんたちの すみれぐみでは、いま、ままごとあそびが、とってもさかんです。


ほら、おおきなはこに ままごとのどうぐが いっぱい つまっているでしょう。


このあいだなんか あばれんぼうの あきらくんまで むちゅうになって

「きょうは おとうさんが みんなに とくべつうまいものを くわせて やるぜ!」って、だいかつやくしたのです。


でも、おかあさんになるのは いつも、せのたかいみよちゃんか まりちゃんに きまっています。

さっちゃんは たいてい、ちびのいもうとか あかちゃんです。


さっちゃんだって、いちどでいいから ながいスカート はいて エプロン つけて、おかあさんに なってみたいのです。
「ほらほら、ごはん こぼしちゃ だめでしょ。」なんて いってみたいのです。


だから けさ、ようちえんで けいこせんせいが、
「きょうのおかあさんは だれですか?」っていったとき、
「あたし おかあさんに なる!」って とびだしたのは さっちゃんでした。

さっちゃんは かけていって、 ままごとばこから エプロンを さっと ひっぱりだしました。


まりちゃんが、あわてて いいました。
「あたしよ、おかあさんは!」


「ちがうよ、きょうは あたしよ。あたしだって おかあさん やりたいもん。」


そしたら まりちゃんは おこって、まっかなかおをして いいました。

「さっちゃんは おかあさんには なれないよ! だって、てのないおかあさんなんて へんだもん。」


まわりにいた ゆきちゃんや なおこちゃんも、
「そうよ!」「へんだよ!」といいました。

「おれ、おとうさん やーめた!」って、あきらくんが いいました。



「あたしだって おかあさんに なれるよ!」

そう さけぶと、さっちゃんは エプロンをにぎりしめたまま、まりちゃんに とびかかりました。
まりちゃんもまけずに、さっちゃんのかみのけを ひっぱりました。
けいこせんせいが あわてて とめにはいったとき、さっちゃんは いきなりエプロンを まりちゃんに なげつけて、へやのそとに とびだしました。


だいすきなかばんも ぼうしも おいたまま、くつも はきかえないで、ようちえんを とびだしました。

「みんな みんな、だいっきらい! だいっきらい!」 こころのなかで そう さけびながら、さっちゃんは かけました。

じどうしゃが けいてきを ならしても、じてんしゃのおねえさんが ころびそうに なっても、 さっちゃんは きがつきません。

「どうしたの さっちゃん!」 かどのぱんやの おばさんのこえも、さっちゃんのみみには はいりません。


ただいまも いわず、さっちゃんは げんかんのドアを あけました。

「さっちゃん どうしたの?」

びっくりして、おかあさんが ききました。

さっちゃんは ハーハー あらいいきをして たっています。


「おかあさん、さちこのては どうして みんなと ちがうの? どうして みんなみたいに ゆびが ないの? どうしてなの?」




あなたのてには、ゆびが いくつありますか。
おとうさんゆび、おかあさんゆび、おにいさんゆび、おねえさんゆび、それから あかちゃんゆび、

グー チョキ パー、
きつねや いぬの かげえを つくったり、ひとりあやとりも できますね。

てには、いつつのゆびが
あります


でも さっちゃんの みぎてには いつつのゆびが ないのです。


おかあさんは、もう むねが いっぱいでした。
だまってさっちゃんを ぎゅっと だきしめました。

しばらくして、ちいさいけれど とてもしんけんなこえで いいました。
「さちこはね、おかあさんの おなかのなかで、はじめ、ちいさな ちいさないのちのつぶだったの。

その いのちのつぶが だんだん おおきくなって、てや あしや しんぞうが できて、にんげんのからだに なっていくの。

でも さちこは そのときに、おなかのなかで けがをしてしまって、ゆびだけ どうしても できなかったの。
どうして おなかのなかで けがなんかしてしまうのか、まだ だれにも わからないの。」



「しょうがくせいに なったら、さっちゃんのゆび、みんなみたいに はえてくる?」
さっちゃんは おかあさんのかおを じっと みつめて、ききました。


おかあさんは りょうてで、さっちゃんのてを やさしく つつみました。



とても つらいことでしたが、おもいきって いいました。
「さちこのてはね、しょうがくせいに なっても いまのままよ。ずっと、いまのままよ。
・・
でもね、さっちゃん。これが さちこの だいじな だいじなて なんだから。
おかあさんのだいすきな さちこの かわいい かわいいて なんだから・・。」


さっちゃんのめに みるみる なみだが あふれました。
「いやだ、いやだ、こんなて いやだ。」

おかあさんのめにも やっぱり なみだが あふれました。



そのひの よる、おふろから あがった さっちゃんは、ふと かがみに うつっている じぶんに きがつきました。

ゆびのない ちいさな まるいて。かがみのなかの ては、まるで はじめてみる しらないひとの てのようでした。

「さっちゃんは おかあさんには なれないよ!だって、てのないおかあさんなんて へんだもん。」

ほんとだったら どうしよう。もし、ほんとだったら どうしよう。

ふとんのなかで さっちゃんは、いつまでも ねむれませんでした。



つぎのひ、さっちゃんは ようちえんを やすみました。
いちにちじゅう、おにわで だいすきな くまさんと あそびました。


おかあさんが しんぱいして はなしかけても、
「いいの。」と いうだけです。

ゆうがた、けいこせんせいが やってきても やっぱり「いいの。」と いうだけでした。




さっちゃんが ようちえんに いかなくなって、なんにちか たちました。

なかよしのみちこちゃんが あそびにきたときだけは、ひさしぶりに たのしそうでしたが、
あとは やっぱり、もとの さみしいさっちゃんでした。






おかあさんに、とうとう あかちゃんが うまれました。

さっちゃんは おとうさんに つれられて、びょういんに いきました。

ゆりかごのなかで、あかちゃんは ねむっていました。
さっちゃんが そっと ほっぺたに さわると、ぴくんと かわいいりょうてを ふりました。

「さちこのおとうとだよ、よろしく。」
おとうさんが、にこにこして いいました。

「さちこも とうとう おねえさんね。」
おかあさんも、とても うれしそうでした。



びょういんのかえりみち、おとうさんとさっちゃんは てを つないで あるきました。


まちも そらも、いっせいに ゆうやけいろに なりました。


さっちゃんが、ぽつんと いいました。
「おとうさん。さっちゃんも、おかあさんに なれるかな。」


おとうさんは びっくりして、さっちゃんのかおを のぞきこみました。

「さっちゃん ゆびが なくても おかあさんに なれるかな。」


「なあんだ、さちこは そんなこと しんぱいしてたのか。
なれるとも、さちこは
すてきなおかあさんに なれるぞ。
だれにもまけないおかあさんに なれるぞ。」

おとうさんは、さっちゃんのてを おおきく ふって いいました。

「それにね さちこ、こうして さちこと てを つないで あるいていると、とっても ふしぎな ちからが さちこのてから やってきて、おとうさんのからだ いっぱいに なるんだ。

さちこのては まるで まほうのてだね。」


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その後 自分の力 で 立ち上がって いく・・ 続きがある素敵な お話 でした・・。



「これが、わたし」と、子どもなりに自分の現実をひきうけている・・

「障害児」という特別な子どもがいるのではなく、豊かな力を体じゅうに秘めている可愛いらしい子どもたちがいる。

それが さっちゃんです
【小冊子より】


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